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2009年3月 6日 (金)

伊勢物語朗読:第二十三段後半

 さて、年ごろ 経るほどに、女、親なく、頼りなくなるままに、もろともにいふかひなくてあらむやはとて、河内の国、高安の郡に、行き通ふ所いできにけり。さりけれど、このもとの女、悪しと思へるけしきもなくて、いだしやりければ、男異心ありてかかるにやあらむと思ひうたがひて、前栽の中に隠れゐて、河内へいぬる顔にて見れば、この女いとよう化粧じてうちながめて、

 「風吹けば沖つ白波 たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ」

とよみけるを聞きて、限りなくかなしと思ひて河内へもいかずなりにけり。
 まれまれかの高安に来て見れば、初めこそ心にくくもつくりけれ、今はうちとけて、手づから飯匙とりて、笥子のうつはものに盛りけるを見て、心憂がりて、行かずなりにけり。さりければ、かの女、大和の方を見やりて、

 「君があたり見つつを居らむ生駒山雲な隠しそ雨は降るとも」

と言ひて見いだすに、からうじて大和人、「来む。」と言へり。よろこびて待つに、たびたび過ぎぬれば、

 「君来むといひし夜ごとに過ぎぬれば頼まぬものの恋ひつつぞ経る」

と言ひけれど、男住まずなりにけり。

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コメント

やはり朗読は素晴らしい♪
やさしく静かな朗読で、目の前に、物語の情景が浮びました。

浮気者の男に、化粧して(身だしなみを整えて)、
『風吹けば~』と、恐ろしい所に独り向かう男を、案じさえする !(^^)!
その奥ゆかしさは、「女性の鑑」とでもいうべきなのでしょうねぇ。
現代の女性とは大違い、心惹かれる“奥ゆかしさ”に…、I’ll boost your rank up through my click.

投稿: Grayman Returns | 2009年3月 6日 (金) 22時42分

Grayman Returnsさん
いつもありがとうございます。(*^.^*)
女性の鑑・・・少々耳がいとうございます。

投稿: noriko | 2009年3月 7日 (土) 14時00分

昔の女性の奥ゆかしさ爪の垢でも煎じて飲ませたいですね。

投稿: 豪腕プチリンコ | 2009年3月 8日 (日) 19時17分

>プチリンコさん、
ではうちの細君にも爪の垢を・・・なんて言ったら叱られますのでやめておきます。

投稿: kazu | 2009年3月 9日 (月) 08時10分

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