伊勢物語朗読「第九段」その二
行き行きて、駿河の国にいたりぬ。宇津の山にいたりて、わが入らむとする道は、いと暗う細きに、つた、かえでは茂り、物心ぼそく、すずろなるめを見ることと思ふに、修行者あひたり。
「かかるみちはいかでかいまする」、
といふを見れば見し人なりけり。京に、その人の御もとにとて、文書きてつく。
「駿河なる宇津の山べのうつつにも 夢にも人にあはぬなりけり」
富士の山を見れば、五月のつごもりに、雪いと白うふれり。
「時知らぬ山は富士の嶺いつとてか 鹿の子まだらに雪のふるらむ」
その山は、ここにたとへば、比叡の山を二十ばかり重ねあげたらむほどして、なりは塩尻のやうになむありける。
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