伊勢物語朗読「第九段」その一
第九段の初めの部分、「かきつばた」の歌を詠むところです。
原文を載せておきます。
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むかし、をとこありけり。そのをとこ、身をえうなきものに思ひなして、京にはあらじ、あづまの方にすむべきくにもとめにとてゆきけり。もとより友とする人、ひとりふたりしていきけり。道知れる人もなくて、まどひいきけり。
三河のくに、八橋といふ所にいたりぬ。そこを八橋といひけるは、水ゆく河の蜘蛛手なれば、橋を八つわたせるによりてなむ、八橋とはいひける。その沢のほとりの木のかげにおりゐて、乾飯くひけり。その沢にかきつばたいとおもしろくさきたり。
それを見て、ある人のいはく、かきつばたといふ五文字を句の上にすへて、旅の心をよめ、といひければよめる。
「から衣きつゝなれにしつましあれば はるばるきぬる旅をしぞ思ふ」
とよめりければ、みなひと、乾飯の上に涙おとしてほとびにけり。
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