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2010年3月30日 (火)

伊勢物語朗読「第四十段」

 昔、若き男けしうはあらぬ女を思ひけり。さかしらする親ありて、思ひもぞつくとてこの女をほかへおひやらむとす。さこそいへまだおひやらず。人の子なれば、まだ心いきほひなかりければ、とどむるいきほひなし。女も卑しければすまふ力なし。
 さるあひだに思ひはいやまさりにまさる。俄かに親この女をおひうつ。男血の涙を流せども、とどむるよしなし。率て出でて去ぬ。男泣く泣くよめる、

 「出でていなば誰か別れの難からむ ありしにまさる今日はかなしも」

 とよみて絶えいりにけり。親あわてにけり。猶思ひてこそいひしか、いとかくしもあらじと思ふに真実に絶えいりにければ、まどひて願たてけり。
 今日の入相ばかりに絶え入りて、又の日の戌の時ばかりになむからうじていき出でたりける。
 昔の若人はさるすける物思ひをなむしける。今の翁まさにしなむや。

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