伊勢物語

2009年10月17日 (土)

伊勢物語「第百一段」:その場の空気が・・・

前に紹介した中納言行平(在原行平)も、伊勢物語に登場します。

第百一段は行平さんの家でのお話です。

行平さんの家においしい酒があるということで、藤原良近(まさちか)というお役人を招待して宴会を開くことになりました。なんといってもこの時代に絶大なる力をもっている藤原氏です。
集まった人たちはなんとかこのお役人にきにいられて出世でもできないかと必死です。

花瓶には一メートル以上もあるるようなりっぱな藤の花が差してあります。なんといっても藤原氏ですから。

そこに現れたのが行平さんの弟、ご存じ在原業平。役人はこの和歌の名人に歌を読めといいます。
日頃から藤原氏にはいい感情を持っていない業平さんは、かたくなにこばみます。
「私なんか歌の読み方もしりませんので・・・」

それでも無理やり読めというので

「咲く花の下にかくるる人を多み ありしにまさる藤のかげかも」

という歌を読みました。

“咲く花のしたにお世話になっている人が多くいるので 今よりもまして藤の花かげがますます大きく見えます。”
という意味ですが、“ありし”は在原にかけているともてれるし、なにかイヤミったらしく聞こえます。

そこにいた人が、どうしてそう詠んだのかと聞くと、「藤原氏がますます栄えるようにと読んだのですよ」と業平さんは、しらじらしく答えましたが、
どうも気まずい空気が流れたようで一同シーンとなってしまい、これ以上歌の話題にはだれも触れませんでした。

その後の宴会はどうなったのかは書いてありませんが、藤原氏の役人もしてやられたという感じで業平さんはさすがに一枚上手だったようです。

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2009年10月12日 (月)

伊勢物語「第百七段」:代筆

ここのところ百人一首を紹介しておりますが、中納言行平、藤原敏行などは伊勢物語にも登場しております。

ということで伊勢物語の第107段。

藤原敏行さんのお話です。
「昔、あてなる男ありけり」で始まりますが、その男とは例の在原業平さん。
その家にいた若い娘を藤原敏行さんがすきになり歌を詠んで送りました。

でもその女は若くて歌も上手に書けないのでそこの主人が代わりに書いてやりました。ラブレターの代筆みたいなものですが、代筆したのがなにせあの業平さんですから、みごとな歌になります。

「つれづれのながめにまさる涙河 袖のみひぢて逢うよしもなし」
“あなたのことを思っていると長雨のときの川よりも多いほど、私の涙で袖が濡れて、あなたに逢うこともできません”

「あさみこそ袖はひづらめ涙河 身さへながると聞かばたのまむ」
“涙の川も浅いので袖がぬれるくらいなのでしょう。体ごと流されるくらいならあなたの思いを聞いてもいいですよ”

と、みごとな歌を返します。業平さんの代筆ですから当然です。

男は代筆とはきづかず、めでたく一夜を共にします。

その後の雨の日に男が女のところへいこうかどうか迷っていると、またも業平さんの代筆で、

「かずかずに思ひ思わずとひがたみ 身をしる雨はふるぞまされる」
“私を思ってくださっているのか聞くことはできませんが、この雨だけが私の気持ちを知っています”

と、またまたみごとな歌を送ったので、敏行さんは蓑も笠もつけず大急ぎでびしょ濡れになってやってきました。こんな歌を送られたら彼女の元へ走らずにはいられませんよね。

敏行さんは代筆とも知らず、かわいそうな気もしますが、めでたく結ばれたので、まぁいっか。
サイドバーのおすすめの和歌は敏行さんの歌に替えました。

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2009年7月18日 (土)

伊勢物語「第九十五段」:彦星

伊勢物語はどこから読んでも楽しめます。物語もこの男の一生をほぼ追っているようですが、あまり気にしなくてもいいようなところもあります。

前回紹介した第10段は、恋に破れた男が旅に出て、性懲りもなく他の女に手を出すという話ですが、す~っと後に飛んで第95段では、またもあの藤原の高子姫が登場します。男が背負って逃げて、途中で鬼に食われてしまったというあのお姫様です。

男は二条の后(藤原高子)にしつこくいいよります。あまりの熱心さに几帳越しに会うことにします。
男はこのチャンスを逃すまいと歌を詠みます。

「彦星に恋はまさりぬ天の河 へだつる関を今はやめてよ」

“織姫を思う彦星よりも私の恋はまさっているのですよ 天の川のようなそのすだれはどけてください”

「やめてよ」はオカマ風に「やめてヨー」と言っているのではなくて、古文の命令形です。

この歌にコロッとまいってしまった高子姫は、
「この歌にめでてあひにけり」
で、この段は終わっているので、あとは想像におまかせします。

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2009年7月 7日 (火)

伊勢物語「第十段」

ひさしぶりに伊勢物語に戻ります。
恋に疲れて都から東の国へ旅に出た男ははるばる隅田川まできて、都を思い涙したというのが第九段。
そして男はさらに武蔵の国までたどりつきそこで女に求婚します。

なんで?

恋に疲れて旅に出たはずの男は、またまた悪い癖が出て性懲りもなく女に手を出そうとします。しかし、その女の父親はあまり興味を示さないようなのですが、母親は積極的です。

なんと母親が娘に代わって歌を詠みます。お母様は実はあの有名な藤原氏の出身で身分の高い男と見ると必死です。お父さんはごく普通の人で、娘を手放すのも嫌なのか、積極的ではありません。

「みよし野のたのむの雁もひたぶるに 君が方にぞよると鳴くなる」
“みよし野の田の面の雁が飛んでいくように あなたの方に心を寄せています”

母親が読んだ歌を送られた男は、がっくりした(とは書いてありませんが)、いちおう返歌を送ります。

「わが方によると鳴くなるみよし野の たのむの雁をいつか忘れむ」
“私のほうに心を寄せているという娘さんを どうして忘れることが出来ましょうか”

なにか心のこもっていないような・・・、
さてどんどん都から離れ旅する男(在原業平さん?)はいったいどこまでいくのでしょうか。

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2009年5月25日 (月)

伊勢物語「第九段」その三

この第九段は都(京都)から東京まで来てしまいますので、伊勢物語にしては長い段です。
都を遠く離れ一行ははるばる隅田川までやってきました。

そこで見かけない鳥がいるので、渡し船の船頭に聞いたところ「都鳥」だという。そこで一首詠みました。

「名にし負はばいざこととはむ都鳥 わが思ふ人はありやなしやと」
“都鳥という名前なのなら聞いてみよう 都のあのいとしい人は無事にくらしているだろうか”

都鳥とはユリカモメのことらしいです。
何を見ても都の彼女が思い出されるといったところでしょうか。
この時代にここまで来たことを思うと、この歌はジンときますね。

写真は都鳥ではなくて、うちの裏にいるカルガモです。

Kamo2

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2009年5月18日 (月)

伊勢物語「第九段」その二

東の方へ旅立ち、かきつばたの歌で涙を流した一行は、駿河の国までやってきました。
宇津の山のあたりの寂しいところまで来たところで知人の修業者と会い、都への手紙に歌を書いて託します。

「駿河なる宇津の山べのうつつにも 夢にも人にあはぬなりけり」

“うつつ”は夢かうつつかのうつつですが宇津の山にかけてあり、なかなか凝った歌です。
いとしい人は夢の中にも出てこないという内容です。

しかしこれをいったい都の誰に送ったのか、興味がありますね。
あの駆け落ちしようとした高子様には届くとも思えないし、ほかに思っている人でもいるのでしょうか?

もう少し進んで富士山の見えるところまできるともう一首詠みます。

「時しらぬ山は富士の嶺いつとてか 鹿の子まだらに雪の降るらむ」
“夏だというのに富士の嶺には、まだら模様に雪が積もっています”

都からはるばる旅してきて富士山を見て感動したのでしょうね、
この後には比叡山を二十ばかり積み上げた高さだと書いてあるので、よっぽど高く見えたのでしょう。
比叡山は848メートルなので×20で16960メートル!

わたしも東京へ行くときの新幹線の窓から見る富士山には今でも感動しますが。

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2009年5月11日 (月)

かきつばた:伊勢物語「第九段」

今日はさわやかに晴れたいい天気でした。
市内のほうに行く用事があったので兼六園へ行ってみました。
かきつばたが見頃でした。

かきつばたの和歌ということで伊勢物語です。

身分違いの女性に恋してしまった男は恋に破れ東国のほうへ旅に出ます。

前にも紹介しましたが、男は在原業平、女は藤原高子、第六段ではさらって逃げようとしますが鬼に食われてしまうという、すごい話になります。実は身内に連れ戻されたという話のようですが。

さて、東国へ友達と共に旅に出た男ですが、三河の国、八橋というところでかきつばたが咲いていたので、かきつばたという五文字を句の上に置いて歌を読めといわれて、読んだ歌。

ら衣 つつなれにし ましあれば るばるきぬる びをしぞ思ふ」
“から衣の着物が身になじんだような妻が はるばる来た今はしみじみと思われます”

この歌を詠んだところ同行の人たちは皆涙を流したということです。
即興でこんな歌をよむのですから、すばらしい!

写真は兼六園のかきつばた。

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2009年4月18日 (土)

伊勢物語「第九十段」桜花

桜の花もそろそろ終わりでしょうか。

百人一首からいくつか紹介してきましたが、ひさびさに伊勢物語の中から桜を歌った一首です。

「桜花けふこそかくもにほうとも あなたのみがた明日の夜のこと」

”桜の花が今日はこんなに美しく咲いているけれど、明日の夜にはどうなることやら”
「あなたのみがた」は、「ああ、たのみがたい」という意味です。

この話は、
男が恋していた女はいつも冷たくて全く相手にしてくれなかったが、あまりの熱心さに、
『明日の夜はすだれ越しにでも逢ってあげてもいいわよ』
といってくれたので、男はたいそう喜んだ。
しかし本当に明日の夜は逢ってくれるのか心配になって、桜の枝に歌を書いて結びつけ送ったという、せつない男の話です。

女は男があまりにもしつこいので『あはれとや思ひけむ』と、逢うことにしたのですが、この心配性の男もこんな歌を送ってはまた嫌われるような気もしますが・・・

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2009年3月30日 (月)

桜がなかったら・・・

今日は暖かい日でした。タイヤ交換もしたし、やっと春という感じです。

桜の開花宣言が富山で出たらしい、福井ではもう出ている、石川はまだか?なんてどうでもいいようなことですが、なにかソワソワする時期です。
年度末、移動、卒業、入学、あまりに周りがソワソワしていると、自分まで落ち着かないような・・・もう会社にいるわけでもないし、関係ないのですが・・・

「世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」 在原業平、古今集
“世の中に桜というものがなかったら 春はのどかなものなんだろうなぁ”

ご存じプレイボーイの業平さん、なかなか渋いことをいいますが、花見の宴会での歌ですから、十分桜を楽しんでいるようです。
でも桜がなかったらやっぱりさびしいでしょうね。

もちろん伊勢物語にも出ています。「第八十二段」

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2009年3月23日 (月)

伊勢物語は原文で

伊勢物語は、ぜひ原文で読むことをおすすめします。

各段は短編でどこから読んでもいいですし、和歌も名歌が揃っています。
これまでブログで取り上げた段の原文をホームページのほうに載せましたので、ぜひ読んでみてください。古文はわからなくても読んでいるとなんとなくわかります。

http://homepage3.nifty.com/wakaotazunete/ise.html

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