伊勢物語第八十二段 「桜」
震災から一ヵ月、まだまだ被災された方の厳しい状況は続いています。お花見宴会で浮かれるような気分ではありませんが、こんな時こそおだやかに花を眺める気持ちは大切かもしれません。
伊勢物語から、桜の木の下で歌を詠む場面です。
第八十二段から抜粋です、
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その木のもとにおりゐて、枝を折りてかざしにさして、上中下(かみなかしも)みな歌よみけり。
馬の頭(うまのかみ)なりける人のよめる、
「世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」
となむよみたりける。又人の歌、
「散ればこそいとど桜はめでたけれ うき世になにか久しかるべき」
とてその木のもとはたちてかへるに、日ぐれになりぬ。
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おおまかな意味は、
“桜の木の下で馬を下り、枝を折って冠の飾りにし、身分の高い人も低い人もみんなで歌を詠んだ。
馬の頭が詠んだ歌
「世の中に桜の木が全くなかったら、春の心はもっとのどかだったろうに」
他の人は
「散るからこそ桜はすばらしい。この世にいつまでも変わらないものがあるだろうか」
といってその木のところから帰ると、日暮れになった。”
となります。
この2首は、桜の花をちょっと違った角度から詠んだ歌ですがどちらも素晴らしい歌です。
この時代背景もあるのでしょうが、藤原氏全盛の世を皮肉っているのかもしれません。
桜が咲くとなんとなく感傷的になってしまいます。
写真は近所の用水沿いの桜、今日は満開です。ほとんど人もいなくてちょっぴりさびしい桜です。
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